2024年度(令和6年度)の横浜市立南高校付属中学校の適性検査Ⅰの問題の解説をしています(適性検査Ⅱの解説はこちらへ)。
2024年度(令和6年度)の問題と解答が、カナロコ(神奈川新聞のサイト)で公表されていますので、まずは問題をダウンロードしてください。
適性検査Ⅰの問題構成
大問1と大問2の構成でした。
大問1
地理、歴史に関連した、資料の読み取りや概算での計算が出題されました。
小学校の教科書の範囲内の知識と問題中に準備された資料で解ける問題ばかりです。
大問2
資料を2つ読み比べての要約文で340~400字以内で記述する。
共通点と各資料ごとにその共通点の具体的な部分を記載する3段落の構成とするような指示がありました。
解答・解説
大問1
問題1
【会話1】中の1 「太陽の出ない 季節」 という言葉が使われている地域として最も適切な地域を次の【地図】中の1~4 から一つ 選び、 番号を書きなさい。
問題1 解答
問題1 解説
資料2の地球儀の写真より、地球儀を固定している軸の上側が、地球儀を回転させても光が当たらない地域となる。
この地域が「太陽の出ない季節」が存在する地域であろうと想像できる。
よって地図の上の方だろうと予想できるので、答えは1だと分かる。
次のような考え方でも可
「太陽のない季節」→「白夜の反対(極夜:きょくや)」→「北欧の辺り」で、地図を見て「1」
問題2
【会話2】中の「2にあてはまる気温と降水量のグラフを次のAとBから選び、【会話2】中の「3にあてはまる 作物との組み合わせとして最も適切なものを 、【 資 料 5 】 ~ 【資 料 7 】を参考にしてあとの1 ~ 6から一つ選び、番号を書きなさい。
1 A と コーヒー 2 B と コーヒー 3 A と オリーブ
4 B と オリーブ 5 A と 小麦 6 B と 小麦
問題2 解答
問題2 解説
【資料4】りかさんが調べたバナナの栽培条件
・高温多湿な土地に育つ
・気温2 7~3 1°Cくらいがいちばん元気に育つ
・暑い季節は毎日しっかり水やりをする
【資料4】から、暑い地方の話だと分かる。
降水量と気温のグラフは、「A」だと分かる。
また、暑い地方なので、
【資料6】の地図は「熱帯」となる。
【資料6】の「熱帯」に当たる国を【資料7】から探すと、「ブラジル」「インドネシア」「ベトナム」「エチオピア」になる。
それらの国は「資料5」のコーヒーができる国だと分かる。
よって、降水量と気温のグラフは「A」、できる作物は「コーヒー」なので、選択肢の「1」が答えとなる。
問題3
【資料8】を参考にして、672年と1868年に起こったできごとを1~6からそれぞれ一つずつ選び、番号を書きなさい。
問題3 解答
問題3 解説
【資料8】の下にある説明から、それぞれの年を10と12で割った時の余りをまず求めればよいことが分かります。
<672>の場合
672を10で割った余りは、1桁目の数字と同じなので「2」となるので、【資料8】の十干の表から「壬」
672を12で割った余りは、割り切れるので「0」となるので、【資料8】の十二支の表から「申」
よって、672年は「壬申」だと分かるので、選択肢の5となります。
<1868>の場合
1868を10で割った余りは、1桁目の数字と同じなので「8」となるので、【資料8】の十干の表から「戊」
1868を12で割った余りは、わりきれするので「8」となるので、【資料8】の十二支の表から「辰」
よって、1868年は「戊辰」だと分かるので、選択肢の4となります。
問題4
【資料9】中の④下関条約が結ばれたところがある県と⑤門司港がある県の2つの県以外で起こったことを次の1~4から一つ選び、番号を書きなさい。
1、中国(漢)の皇帝から与えられた金印が発見された。
2、源氏が壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼした。
3、元との戦いに備えて防塁が作られた。
4、ポルトガル人が漂着し、鉄砲が伝わった。
問題4 解答
問題4 解説
【資料9】中の④の県は山口県。⑤の県は福岡県となります。
選択肢1~4が該当する県は、下の通りになるので、福岡県と山口県に当てはまらないのは、4の鹿児島県となります。
1、中国(漢)の皇帝から与えられた金印が発見された。 → 福岡県( 金印 「 漢委奴国王 」が今の福岡市で発見)
2、源氏が壇ノ浦の戦いで平家を滅ぼした。→ 山口県(現在の下関市の関門海峡内)
3、元との戦いに備えて防塁が作られた。→ 福岡県(現在の博多湾の沿岸に築かれた)
4、ポルトガル人が漂着し、鉄砲が伝わった。→ 鹿児島県(種子島にポルトガル人が漂着し、鉄砲が伝来)
問題5
【資料10】はこの時代(明治時代)の改革についての資料です。これは[ ⑥ ]を表しています。
【会話4】中の[ ⑥ ]にあてはまる言葉として最も適切なものを次の1~4から一つ選び、番号を書きなさい。
1.徴兵制にもとづいて兵役についた人の割合の変化
2.学制にもとづいて小学校に通った子供の割合の変化
3.殖産興業の政策にもとづいて工場で働いた人の割合の変化
4.古い身分制度の廃止にもとづいて平民とされた人の割合
問題5 解答
問題5 解説
資料10によると、明治23年では約50%だったものが、明治43年にはほぼ100%になったものです。
みなみさんが「今では当たり前のように思えることも、昔はちがったのですね」
とありますから、4つの選択肢の中で「今が当たり前のもの」は、2の小学校に通った子供の割合ですね。
1.徴兵制にもとづいて兵役についた人の割合の変化
→ 明治時代は、徴兵制はありましたが男性のみ
2.学制にもとづいて小学校に通った子供の割合の変化
→正しい
3.殖産興業の政策にもとづいて工場で働いた人の割合の変化
→農業に従事する人もいたでしょうし、さすがに国民のほぼ全員が工場で働くことは無理でしょうね。
4.古い身分制度の廃止にもとづいて平民とされた人の割合
→明治時代の平民とは、かつての農民と町民を合わせた呼び名です。かつての武士は士族とされるなど、平民以外も存在しました。
問題6
りかさんは日本や外国の言葉に興味を持ち、さらにくわしく調べることにしました。その際に大切だと考えられることはどのようなことですか。次の【条件】に従って書きなさい。
【条件】
1.本文中の【会話1】〜【会話4】の内容をふまえて書きなさい。
2.「その国の言葉を調べる時には」に続けて「が大切です。」へつながる一文になるように書きなさい。
3.10字以上20字以内で書きなさい(読点も字数に数えます)。
問題6 解答例
問題6 解説
【会話1】で、りかさんが「その国の言葉にはその国の文化が反映されているんですね」という言葉が最大のヒントとなります。
【会話2】は、気候や特産品についての会話です。
【会話3】【会話4】は、歴史的な背景についての会話です。
それぞれ大切であると読み取れるので、条件に合わせてまとめます。
大問2
問題1
「科博の研究員」が「筋肉の名前は、とりあえずそんなに気にしなくてもいいんじゃない?」と言ったことをきっかけに、筆者が気づいたこととして最も適切なことを次の1〜4から一つ選び番号で答えなさい。
1.生き物の解剖では、体の構造を理解することを通して、神経の名前を特定することが重要だということ。
2 科博の研究員にとってキリンは専門外の分野であるので、体の構造の観察は重要ではないということ。
3 生き物の体の構造を理解するには、目の前にあるものをありのままに観察することが重要だということ。
4 「名は体を表す」というように、筋肉の名前は体の構造を表していると理解することが重要だということ。
問題1 解答
問題1 解説
筆者が科博の研究員に言われて気づいたことは、解剖の目的とは「筋肉の名前が分かることではなく、生き物の体の構造を理解すること」である。
1の「神経の名前を特定する」は【資料1】中に記載がなく、名前を特定することは目的ではないという趣旨に当てはまらない。
2の「キリンの専門外であるから」という判断の記載はない。また、「名前ではなく、どことどこをつなぐ筋肉かきちんと観察して記録しておけばいい」と体の構造の観察と記録が重要であると述べている。
3が当てはまる。
4は、筋肉の名前はヒトの筋肉の形を基準につけられていることが多いので、キリンの場合に名前から想像される形などを先入観を持って見てしまうと正しく見つけられないことがあるため、当てはまらない。
問題2
【資料1】【資料2】に共通する考えを、次の【条件】【書き方の注意】にしたがって説明しなさい。
【条件】
1 三つの段落で構成し、三百四十字以上四百字以内で書くこと。
2 三つの段落それぞれの内容は次のようにすること。
第一段落 | 【資料1】【資料2】に共通する考え |
第二段落 | 共通する考えが【資料1】では具体的にどのように述べられているか |
第三段落 | 共通する考えが【資料2】では具体的にどのように述べられているか |
【書き方の注意】
1 題名、名前は書かずに一行目、一マス下げたところから、書くこと。
2 段落を作るときは改行し、一マス下げたところから、書くこと。
問題2 解答例
問題2 解説
三段落とする、段落の頭は一字下げる、文字数を340字~400字にするなどの条件は必ず守ること。
共通する考えを述べる第一段落では、名前や他人の解説よりも自らが観察して、その時に思ったことを大切にすることの重要性が、共通の考え方になる。
資料1のキリンの解剖では、筋肉の命名が目的ではなく、キリンの体の構造の理解が目的で、筋肉の特定が目的ではないことを具体例をふまえて要約する。
資料2の美術鑑賞については、美術館の専門家の書いた解説を理解したり作品名や作者の名前を覚えるよりも、作品をみて何か感じるかの受容性を具体例をふまえて要約する。
まとめ
大問2つの構成は、令和5年度と同じでした。
大問1は、問題文をよく読んで教科書レベルの知識があれば解くのに困るレベルではなかったですね。
大問2は、共通点が何かを見極めて、各資料から共通点という視点でそれぞれを要約する必要がありましたね。