横浜南の問題といえば、全国の公立中高一貫校の中でもトップクラスの難しさで、腕試しのために取り組む人も多いのではないでしょうか。
問題文や設問の全てを載せていないので、カナロコさんのページなどから、問題文をダウンロードして手元におきながら解説を確認してみて下さい。
令和5年度(2023年度)入学者向けの横浜市立南高校付属中学校の適性検査の問題と解答が、カナロコ(神奈川新聞のサイト)で公表されています。
過去問は、夏ごろに「声の教育社」や「東京学参」から過去問問題集が発売されます。
「声の教育社」より最新年度が収録された過去問が発売されています。
適性検査Ⅱについては、こちらで解説しています。
では、令和5年(2023年)2月3日に行われた横浜市立南高校付属中学校 適性検査Ⅰをみてみましょう。
目 次
令和5年度(2023年度)横浜市立南高校付属中学校 適性検査Iはどうだった?
大問1と大問2で、大問1が主にまとめ、大問2が資料の読み取りでした。
大問1のまとめは、2ページ弱(約2000文字)の文章を読んで、300文字以内にまとめる。かつてのように数ページにわたる長文を読んで要約というわけではなく、他の資料や他の複数の文章も参考にするわけでもなく単一の文章からのまとめだったので、じっくりと取り組めたのではないでしょうか。ただし、いざ書こうとしてみると、文字数不足(もしくは、同じような内容の繰り返し)で300文字近くまで書くことができないと思った人も多かったのでは?
まとめで使われた題材は、養老孟司の「ヒトはなぜ、ゴキブリを嫌うのか? 脳化社会の生き方」(扶桑社新書)2019年3月2日発売でした。養老孟司氏といえば、「バカの壁」の作者でもおなじみの解剖脳学者で、公立中高一貫の問題文に頻出の作者の一人ですね。
資料の読み取りは手早く読んで、設問部分を丁寧に確認すればそれほど難易度は高くなかったです。社会は都道府県の日本地図上の場所がわかれば良い程度、計算も概算での計算ができれば問題なかったですね。
適性検査 I
大問1
【資料1】は別途ご確認ください。
問題1
問題1【解説】
「人が意識的につくり上げたもの」を全て選ぶとあります。
本文中では、「人が意識的につくり上げたもの」を人工物と言っているので、「ホール」「都市」「敷石」が当てはまる。加工していない石を敷き詰めた「敷石」であっても、意識的に置いたものなので当てはまります。
問題2
【資料1】の出典は、養老孟司「ヒトはなぜ、ゴキブリを嫌うのか? 脳化社会の生き方」です。
問題2 【解説】
まずは、2つの条件(文字数と指定された段落構成)は絶対に守りましょう。
指定の文字数は、260〜300文字なので、280文字より少ないと出題者の意図(書いて欲しい内容)が汲み取れていない可能性があります。
書くポイントとしては、「人工物」と「自然」との対比は必要です。「人工物」とは人の意識を具現化したもの。「自然」とは我々が完全にコントロールできない世界である。
大問2
問題1
【資料1】~【資料4】は別途ご確認ください。
問題1【解説】
1 「過剰な照明は資源エネルギーの浪費」 → 【資料2】に記載。
ただし、後半の「資源価格の上昇を引き起こし、すべての人に資源が均等に配分されなくなる」は、どの資料にも記載はない。資料2には、続きとして”地球をとりまく環境にも影響を与えている”とだけ記載がある。
2 「過剰な照明は、夜の安全を守るという照明本来の目的に反するのみならず、動植物の生態系にも悪影響を与えることも指摘されている」 → 【資料2】に記載。
3 「星空を、ふるさとの重要な景観と位置付けるとともに、観光や地域経済の振興、そして環境教教育等に生かしていく。」 → 【資料4】に記載。
4 「全国的に夜間照明を増やすことで、地域の安全性を高めるとともに、経済活動を活発にして、地域の活力を高めていく。」 → 特に記載はない。むしろ、夜間照明を抑えることで観光等を活発にして地域経済の振興につなげていくとしている。
5 「星空を見ることのできる環境は、全人類にとってかけがえのない財産である。」 → 【資料2】に記載。
6 「光害の防止に関して、特定の事業者のみの責務を明らかにし、村民や旅行者の生活を安全なものにする。」 → 特に記載はない。光害防止の責務があるのは、【資料1】【資料3】で村民(旅行者もふくまれる)と事業者としている。
問題2
【資料2】~【資料5】は別途ご確認ください。
問題2【解説】
記入例をみると $ 1Km^2 $ あたり1000人ごとの区分のどこに入れば良いかが分かればよいので、人口密度を求める際に、時間短縮のため細かい数値までは計算しない。ただし、この後の問題で人口密度を使って計算する問題がない事を確認しておきましょう。時間短縮のつもりでも計算を二度やることになったら本末転倒ですよね。
問題文中の求めた人口密度を色分けするための記入例
人口密度は次のように計算されます
$ \displaystyle人口密度 = \frac{人口}{面積} $
【資料5】の人口は万人単位なので、記入例と比べ易いように人口を千人単位で考えてみる。
群馬県 | 鳥取県 | 岡山県 | 神奈川県 | |
---|---|---|---|---|
人口(千人) | 1980 | 560 | 1910 | 9180 |
面積($ Km^{2} $) | 6362 | 3507 | 7114 | 2416 |
人口 ÷ 面積 | 1以下 | 1以下 | 1以下 | 3.… |
計算するまでもなく上記の表から、どこの区分に該当するかが分かる。人口(千人)÷ 面積が1以下とは記入例の$ 1~1000人/Km^{2} $に当てはまる。
当たり前の結果ですが、星が良く見える県は人口密度が低いことがよくわかりますね。
今回の都道府県では、「群馬県」と「栃木県」、「鳥取県」と「島根県」、「岡山県」と「広島県」の場所があやふやになった人もいるのでは。
都道府県の場所はしっかりと覚えておきましょう。なじみが少ない地域はどうしても覚えにくいものです。関東圏に住んでいると、九州地方、四国地方、日本海側があやふやになりやすいです。今回は関係ありませんが、都道府県名と県庁所在地が異なる都道府県もおさえておきましょう。
問題3
図1~図3と【資料1】~【資料4】は別途ご確認ください。
問題3【解説】
指定の文字数から考えると17文字~20文字が望ましいです。
内容のポイントとしては、次の2点を両立をさせていることが分かるように記述する必要があります。
1)夜間における人の安全を確保する点
2)星空が見えにくくなる光害を防ぐ点
問題4
【会話2】は別途ご確認ください。
問題4【解説】
「電照菊(でんしょうぎく)」という菊の栽培法についての説明となります。
じつは、わたしはこの電照菊が有名な地域の出身なんです。夏の夜に光輝くビニールハウスは幻想的でとてもきれいなものですよ。
問題文中で、「秋菊は日照時間が短くなると花芽がついて開花する性質があります。」との説明がありますが、「光」を使って日照時間を短くするって???、となった人もいるかもしれません。
ヒントは、わたしが「夏の夜」に電照菊のビニールハウスを見たことです。夏至(6月半ば過ぎ)を過ぎて日照時間が短くなってくると、秋菊はつぼみをつける準備を始めます。そこで光を当て続けて、日照時間が長い状態を人工的に作って、秋菊が感じる季節をずらし(初夏から夏がずっと続いていると勘違いさせて)開花を遅くするのです。
よって、人工的に日照時間を(長く)し、開花を(遅らせて)いるのです。
問題5
【文章】と【資料8】は別途ご確認ください。
問題5【解説】
実は【資料8】は結果的には使用しない。このように一部の資料は使用されないことがあるので不安になるかもしれませんが、選択肢を丁寧に検討して自信を持って使わない資料もあったと思いたいですね。
1: × 【文章】より、ヒラメが興奮するのは緑色のLEDライトの記述だけです。ヒラメが興奮するのは、青色LEDよりも赤色LEDだという記述はありません。【資料8】では、青色LEDの方が赤色LEDに比べて体重増加が大きいが、その理由の記載もない上に、選択肢では赤色LEDのほうが成長が早いとあるので逆である。
2: × 【文章】より、LEDライトの設置費用はそれほど高額ではなくLEDライトにすることで電気代も安くなるので、設備のための費用負担は大きくない。さらに、ヒラメの出荷までの期間が短くなることで総合するとコストの削減が見込まれる、とあるので、選択肢(LEDにすることで総費用が増える)とは合っていない。
3: ⚪︎ 【文章】より、「緑色のLEDライトの光を当てるとヒラメの成長が早くなり、出荷までの期間が短縮され、生産費用が抑えられる」は合っている。
4: × 他の魚(ヒラメ以外)の記述はないため、合っていない。
適正検査Ⅰの解説は以上です。いかがでした?
引き続き適性検査Ⅱの解説もどうぞ。
公立中高一貫校を考えた時に読んだほうが良い本
公立中高一貫校適性検査問題集 全国版 いわゆる「銀本」
公立中高一貫校の過去問集でいわゆる「銀本」と言われる本で、年々厚さと金額を増していってます。全国の公立中高一貫校の過去問が掲載されており、公立中高一貫校の出題形式に慣れるために全国の過去問を解いてみるのが良いとされます。
横浜市立南高校附属中学の過去問
横浜市立南高校附属中学の過去問は、「声の教育社」「東京学参」「教英出版」の3社から発売されています。出版社によっては、適性検査Ⅰの文章が著作権の許可が下りずに掲載されていない場合もあるので中身を確認してくださいね。また、要約文などの解答例が出版社によって異なるので、複数のパターンを確認したい場合は、複数の出版社を持つのも良いと思います。
「声の教育社」が有名ですね。塾に通っている場合には、塾の教材として組み込まれている場合もあるので購入前に塾に確認をしたほうが良いですね。
要約文のパターンを別にしたいのであれば2冊目として「東京学参」や「教英出版」を検討してもよいかも。
「声の教育社」「東京学参」は本形式ですが、「教英出版」は1年度ごとに分かれていて解答用紙も実寸大となっているので、直前期に本番さながらに過去問に取り組みたい時に便利です。